旅犬

たびわんこ

多頭飼いビター&スウィート <後篇>

前編はこちら

tabiwanko.jp

 

(ここまでのあらすじ)


二度犬にかまれたトラウマを持つ
こじらせジョシーバの、りん。

先住犬くまんがいる家庭に引き取られ、
紆余曲折を経て仲良くなったものの、
3年の同居後、年老いた先住犬はひとりで
虹の橋を渡ってしまう…


落ち込むりんのところに、
何やら得体の知れない影が?



…というわけで、
多頭飼いのキラキラした面と
真逆の裏話、後編です。

 

初代犬くまんが亡くなって1年半後、
ついにりんに、初めての後輩犬ができることに
なりました。

 

やってきたのは、文字通り、天使のような
豆柴の男の子😍
我が家にとってはじめての雄柴です。


母犬も父犬も見学時に会っていて、
理想の組み合わせから生まれた子でしたが、
本当にかわいい!そして小さい!

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しかし、「かわいい!」と思うのは、
私たちニンゲンだけ。
りんにとっては、完全に、敵襲来でしか
ありません。


くまんがいなくなってから、ひとりっことして
ぬくぬく育てられてきたのに、突如
家の中にライバルが侵入してきたのです。
しかも、りんの苦手な「犬」。
大きくなったら自分に噛みつくかもしれない
「犬」。


外では他の犬の匂いを嗅いで挨拶したり、
温厚に接するりんですが、
室内は自分のテリトリーですから話は別。


まず逃げる→遠巻きに子犬のケージの
様子を伺う、の繰り返しが続きました。


子犬には宙(そら)と名付けたのですが、
この子は男の子というのもあり、
非常に活発なのです。


とにかく充電が切れるまで動きたがる、
甘嚙み力が強い、
そして…

 

犬 LOVE❤



今回はくまんと同様、生まれた犬舎さんで
きょうだい犬や月齢の近い子犬たちと
遊ばせてもらっていた結果、宙はしっかり
「犬が好き!」な状態で我が家に来たのです。


犬に恐怖心がある成犬りんと、
犬が大好きな子犬の宙、
「混ぜるな危険」の香りしかしません。

 

ええ。

我が家に来て一週間後、
ケージ越しではなく直接会わせてみたら、
本当に、危険でした…

 

「犬だー!」と、一目散に駆け寄る宙。
「犬だー!」と、恐怖におののくりん。


怖がってしっぽをまいて逃げるりんを、
跳ねながら追う宙。
そう、宙はまだ、犬同士のコミュニケーション
ルールまでは、知らなかったのです。

 

 

「ンギャギャギャギャ💢!!」

 


という大声を出して、ついにりんが
歯をむいて噛まんばかりに威嚇。
宙はびっくりしてキョトンでしたが、
ここから、りんの中で

「この得体のしれないナニかは拒絶する」


という、決定事項ができてしまいました。

 

そこからの、りんの宙への拒絶状態は
酷いもので。

 

窓ガラス越しに姿が見えようものなら、
網戸に穴を開けんばかりの勢いで
牙をむいて激突💨
フェンス越しであっても、宙の姿が近づくと
大声で吠えて飛びつくように威嚇💥

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全身から「私に近づくな!」と訴えており、
予想以上に、彼女にストレス状態を強いる
ことになりました。


もちろん、極力りんから宙が見えないように
フェンスや目隠しを設け、りんの自室がある
2階には宙が上がれないようにし、
居場所はしっかりと分けました。
それでももう、ちらりと姿が見えるだけで
アウトだったんです。


SNSには仲の良い多頭飼いの写真があふれて
いて、我が家の状況との落差に、
悲しくなることも何度もありました。


それでも幸いだったのは、宙のメンタルが
幼く強かったこと。
仕切りがなかったら半殺しの目に遭わせそうな
りんのキレ顔を見ても
「わー、なに?遊ぶの?きゃー!」
と、逆に喜ぶんです。
(それで余計に、りんがイライラするんですが)


なおこの状態で、私たちが具体的に
行っていたのは

 1️⃣ 二頭いっしょのもぐもぐタイムを作る。
  (フェンス越しに距離を保ったうえで両頭に
  おすわりをさせ、交互におやつをあげる)

 2️⃣ 宙がケージ外に出るのは、りんが1階に
  いないとき。
  大声でかわいがらない。


 3️⃣ りんの散歩時間を長くとる。
  りんと遊ぶ時間を長くとる。
  りんだけの時間を作る。
  (宙をパピー同士で遊ばせてくれる
  獣医併設ホテルに預けて、
  終日りんの日を作ったりもしました)


 4️⃣ 天気が良い日は宙を抱っこして
  りんの散歩に同行する。
  (宙の社会化推進も兼ねて)


 5️⃣ 2階はりんだけが上がれるようにし、
   宙は上げない。
   他にもりんと宙が人の目の届かない
   ところで不意に接触しないように、
   フェンスを設ける。


これを2か月ほど続けて、ニンゲンも
ノイローゼになりそうなほどの
甲高いりんの威嚇声を日々聞きながら、
二頭いっしょに散歩できるようになる日を
待ちました。

 

そして宙のワクチンプログラムが終わり、
ついに散歩デビュー👏


私たちの中で、二頭が仲良くなるチャンス
として
 ◆ 一緒に散歩する
 ◆ 一緒に宿泊旅行をする
 ◆ 宙が成長して身体が十分大きくなる
この3つを考えていました。


たとえば外での散歩中は、
気にしないといけないものが他にたくさんあり、
りんも宙に構ってられないだろうから、
近くにいることにも徐々に慣れていくのでは
という期待があったのです。


結果はまあ、ほぼ当たっていて、
散歩時は宙がりんの横を通っても、
りんは何も言いませんでした。
りんが宙が見えていないフリをしているように
見えましたが、なんとか二頭同時に散歩は成功。
一歩前進が見えて、ほっとしました。


次は、いっしょに一泊旅行です。
宙がウチに来て3か月弱、まだ二頭を同室で
放すことはできませんでしたが、
部屋付きドッグランと室内で交互にフリーにし、
やっとりんも宙の姿を見ても、唸らなくなって
きました。


そしてこの旅先で夜を明かした翌日、


やっと
やっと


りんと宙が、
いっしょに
遊んだのです😭😭😭

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飼い主的にはもう
「クララが立った!」以来の感動です。


宙の姿を見るだけで、
『殺ってやる』くらいの殺し屋感を
全身にたぎらせていたりんが、
やっと「これは敵ではないかも」と
認識した瞬間でした。

 

しかし、ここでりんの警戒がすっかり解けた
わけではアリマセヌ💦


りんの「外では遊ぶが、室内では近寄るな」
という状況が、ここから2,3か月続きました。


その間も、噛みつき未遂事件などが
何度かあったにも関わらず、なぜか宙は
「りん、好き!」というスーパーポジティブな
感情を持ち続け、それでもなお続く
りんの威嚇の強さに、私たちもなかなか、
同じ部屋で同時に二頭を放すことができずに
いました。


しかし、宙も生後半年を過ぎて
身体が大きくなり、
りんの2/3ほどのサイズになったかなという
あたりで、またワンステージ、アップする日が。



ついに、りんと宙が室内でも遊ぶように
なったのです。



おそらくやはり、宙の身体の成長が大きかった
かなあと💪


身体が大きくなっても、宙は変わらず
「ぼくはりんに服従します!」という態度を
崩すことなく、常に低姿勢で服従ポーズを
取り続けたこと。

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宙は外でも他犬とうまくやれる性格で、
りんより前に出て他の犬と仲良くしていた
ことなどから、少しずつ、りんの警戒心を
解いていったのだろうと。



室内で遊べるようになってからは
二頭の関係改善は徐々に進みました。



少しずつ、同じ部屋に二頭を放置しても
問題なく過ごせるようになり、
たまにりんが不機嫌でキレそうになると
宙も察して逃げられるようになり、
宙の身体がも大きくなったのでもう
りんに噛まれてもダイジョーブ(?)👍
という思いも飼い主に芽生え、
二頭を隔離しなくても留守番できる
ようになり…

 

お迎えから一年、やーーーーーっと、
普通に仲良く、
過ごせるようになりました🙌

 

でもいまだに、りんは宙に威嚇することが
ありますし、これ以上、りんの性格が
変わることはないでしょう。
むしろ、りんも頑張ってよく
受け入れてくれたと感謝しています。


なので、我が家の2階には
宙を上げたことはありません。
りん専用の逃げ場として、確保しています。


日中はりんも宙も同じリビングにいたり、
テラスでひなたぼっこしたりしていますが、
気が向くといっしょに遊んだり、
横で寝たりして、やっと多頭飼いの幸せを
感じられるようになりました。

 

柴犬は特に、多頭飼いが難しい犬種と言われます。
最近は豆柴も増え、性格の丸い子も
増えていますが、やはり元は、最もオオカミに
近い犬種だなと感じたりします。

 

もし多頭飼いでうまくいかずに困っている方が
いらっしゃれば、ウチもいっしょでした、
とお伝えしたいです。
とても悩み、考え、相談し、他の家と比べて
悲しくもなりました。
流血ギリギリだった瞬間も、何度かあります。

 

でも、こうして一年経って、
なんとかなったというケースもあることを
知っておいていただければ…
いつも完全にベッタリではないですが、
同居犬同士が心地よい距離間で
過ごしてくれれば、一番です。


そして多頭飼いを考えられている方へ。
ケースバイケースなので、たとえば
「異性同士がいい」もしくは「雌と雌がいい」
とか「年齢は近い方がいい」とか、
そこはあまり、気にしすぎる必要は
ないんじゃないかなと。
(ただ介護想定年齢は被らない方が我が身のため
なので、できれば年は近すぎない方がよいかと)


それより万が一うまくいかなかった時のために
「犬の家庭内別居ができる住まい」は
必要だと思います。
多頭飼いがみんなキラキラ楽しく過ごしているか
と言われれば、決してそうじゃないです。
なので万が一のとき、犬が家庭内で
住み分けできないと、最悪、どちらかを手放す
ことになるかもしれません…
(実際、そうした最悪のケースも多く聞きます😢)


悶々したりヒヤヒヤしたり、
いろいろありますが、
それでも多頭飼いで仲の良い姿を
見るのは、飼い主としてもたまらなく嬉しい
ひとときです。


今では散歩中も、どちらかの姿が見えないと、
ちゃんと探して待っているようになりました。


変顔をしながらじゃれ合いをしているおかげで、
体力オバケの宙が運動不足にならずに
済んでいます。
宙が他の犬と親しいおかげで、りんも他の犬に
興味を持つようになり、楽しみが増えたようです。


多頭飼いって、楽しいだけでは決してないですが、
それでも楽しいことは、たくさんあります。


犬と真剣に向き合えば向き合うほど、
大変なことも多いともいますが、
たとえまっすぐ順調な道でなくても、
どうか全ての飼い主さんとワンコさんが、
楽しく毎日を過ごせますように。

(おしまい)